あなたの今までの一番古い記憶はいつですか?
それは何歳くらいのどんな場面ですか?
記憶って不思議ですよね。
なぜその記憶が「自分の中の一番古い記憶」として残っているのでしょう?
いくら考えても答えは出ないし、調べるまでもないようなことに思いをはせる無駄な時間が私らしくさせてくれている気がしています。
さて、私の一番古い記憶。
それはおそらく生まれて9か月くらいの時でした。
なぜ9か月かと言うと私は10か月で歩き始めたらしいのですが、記憶ではその時まだ「歩行器」に乗っていたからです。
祖母の古い一軒家に住んでいて、日中は祖母も父も仕事に行き、私と母で静かに過ごしている毎日。
母がお昼ご飯を作っている音が1階の台所からしている。
私は歩行器に乗って2階のホールから直線の階段を眺めてる。
ふと「この直線に沿って飛ぶ気持ちよさ」を感じ、飛んだ。
次の記憶。
同じ家で季節が進んで夏になっている。
庭にビニールのプールが置かれ水がたまっている。
縁側から眺めていたら水面がキラキラしてとてもきれい。
「あのキラキラの中に行きたい」と飛んだ。
3度目。
母と公園に来たものの、朝から母が暗い顔をしていることが気になって楽しくない。
いいことを思いつく。
「そうだ!私が飛んでるところを見せてあげよう。今まで見せたことないからびっくりする。どうして今まで思いつかなかったんだろう」
公園で一番高い場所、滑り台に走って行き、上から母を呼んで手を振る。
飛びながら母と目が合い、その表情を見て自分がびっくりした。
わたし、飛べてない?
母に笑って欲しかったのに、それどころか心配させることになって、私は痛さを感じないくらいひどくがっかりした。そして一番がっかりしたのは「もしかしてここでは飛べないのかもしれない」という事実だった。
あんなに簡単なことさえできないなんて、「ここ」にいる意味ってある?こんな場所で何ができるっていうんだろう。
幼稚園の友だちの無邪気な笑顔がとてもうらやましくて、私と何かが違うけど何が違うのかわからなかった。きっとそれを「ここ」で知ることはできないんだろうと何となく思っていた。
学校に行くようになり、勉強があって、スポーツがあって、部活が始まって、友だちがいて
「本当は飛べたのに」という思いはほぼなくなっていた。
さらに卒業して就職して独立して仕事して
「本当にこのままでよかったんだっけ?」
「何か忘れてるような気がしてたけど、そもそも何だっけ?」
もはや顧みることすらしなくなっていた。
絵を見るまでは。
自分の中の人に言えない悲しみ。
言ったところで理解はしてもらえないもの。
でも何かが、思いもよらないことで癒してくれる。
それは自分が思うような飛び方ではないかもしれない。でもそれでもいいと思った。
もしかしたら、あなたの中から思わぬ記憶がよみがえるかもしれません。
そう言えば、私ももっと大きな鳥の足にしがみついてかなり高いところを飛んでいたような、はるか昔の記憶があったような気がしてきました。そうだ、それは鳥ではなくてもっと大きな何かだったかもしれません。
え?もしかしてあなたも?
いくら考えても答えは出ないし、調べるまでもないようなことに思いをはせる無駄な時間があなたをあなたらしくいさせてくれる。
そんなことを願っています。 HONEY&CLOUD
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